第三章 黒い剣士8

彼以外の皆もかなりの手練れだ。もともと、有象無象の怪物たちを相手にしてきたリヒター・ベルモンドやアンデルセン神父らだけでなく、千年不敗といわれる伝説の流儀【陸奥圓明流】という武術を使う陸奥九十九もまったく問題なしと言わんばかりの技を見せる。

 陸奥「しかし、それにしても敵さん多すぎだなこりゃ。そういや、他の4人は大丈夫かな。リヒターさんは問題なしとして、アンデルセン神父は…」

陸奥は、アンデルセン神父のいるほうを向くと、

 アンデルセン「我らは己らに問う汝ら何ぞや!! 我らは熱心党(イスカリオテ) 熱心党(イスカリオテ)のユダなり!!ならばイスカリオテよ汝らに問う汝らの右手に持つ物は何ぞや!! 短刀と毒薬なり ならばイスカリオテよ汝らに問う汝らの左手に持つ物はなんぞや!!銀貨三十と荒縄なり!!ならばイスカリオテよ汝ら何ぞや!! 我ら使徒にして使徒にあらず 信徒にして信徒にあらず 教徒にして教徒にあらず 逆徒にして逆徒にあらず!! 我ら死徒なり 死徒の群れなり ただ伏して御主に許しを請い ただ伏して御主の敵を 打ち倒す者なり 闇夜で短刀を振るい 夕餉に毒を盛る者なり

我ら刺客なり 刺客(イスカリオテ)のユダなり!! 時至らば我ら銀貨三十神所に投げ込み 荒縄をもって 己の素っ首吊り下げるなり さらば我ら徒党を組んで地獄へと下り 隊伍を組みて布陣を布き 七百四十万五千九百二十六の 地獄の悪鬼と合戦所望するなり エ”イ”イ”ィ”ィ”メ”ン”」

といいながら、敵を蹂躙している怪物を超えた何かを見た。その形相は、本当に柔らかい笑みをしていた人物と同じなのか困惑するほどに別人であった。偶然近くで戦っていたガッツも、神父の表情をみて、成程あいつも俺と同じ人種というわけだと感じ取っていた。恐らく、彼も何かしら怪物どもに縁があるのだろうということを理解した。

 ガッツ「どうやら、あいつもなかなかの戦闘狂みたいだな。…でもよ、そんなあんたもニィッて表情してるぜ。」

どうやら、ここにも同じ感性の持ち主がいたようだ。ただ強敵との戦いを楽しむ一族のもとに生まれ育った彼も、強いやつが味方も含め多く現れたことに喜びを感じていたらしい。 

 陸奥「そんなガッツさんも、顔が笑ってますよ。どうやら、俺たち同じ穴のむじなってことらしいですね。」

 ガッツ「あぁ、どうもそうらしい。って、そんなこと言っている暇はねぇみてぇだ。ついてこられるか、少年!」

その彼の激に応とただ一言答える。そうして、四人はただひたすら目の前に群がる者たちを倒していく。

そんな中、車の中から一歩も動かない一人の男、【辻谷広行】は一切車から離れようとしない。動かざること、山の如しである。隙だらけに見える彼を襲いに、ガイコツの姿をした生ける屍は彼のほうへ向かう。