第三章 BERSERK 2

マダラ「だが、聞くところによると、お前自身は人間に対する復讐をやめたのではなかったのか?それなのに何故あの男にくみする?」

疑問に思うのは最もだ。復讐をやめた男が、何故復讐を遂げようとする者の下にいるのか?彼の答えは先ほどと同じものであった。

 デュラハン「理由としては同じなのです。奇妙なことではあるのですが、そうとしか言えないのです。伯爵様は不思議なお人です。だからこそ、様々なものたちが彼のもとに馳せ参じるのです。私が仕えているのは、理由の一つとしか言えないでしょう。」

 珍妙な、はっきりとしない答えだ。マダラはそう感じた。果たして、そんな理由でよいのだろうか。一瞬そう思ったものの、しっかり働いているのでこのことはもう良いとした。そもそも、興味を持ったので聞いてみただけだったのだが、話が重くなってしまったのも少しはある。

 マダラ「そうか、どうやら少し長話になったようだな。そろそろ、ここもやつらにばれてしまうからな。もう死体人形ごっこは終いにして、お前は敵にあたって欲しい。お前の主からの命令でもある。俺は今から【戦場】へ向かわねばならない。からな。」

 デュラハン「仰せのままに、マダラ殿。―さて、私は騎士として戦ってもよろしいのですか?それとも、怪物として戦えばよいのですか?」

 

最後に、彼はそんな言葉を加える。そうか、彼はこの時まで迷っているというわけなのだ。今だおのれの心にあるあの時の絶望と共に。

それからすぐである。黒い剣士ガッツと、大統領【ファニー・ヴァレンタイン】が自分の領域にやってきたのは。 

 ガッツ「どうやら、ここが敵さんの本拠地というわけか?」

 ヴァレンタイン「どうやら、そのようだな。しかし、自分の死体を眺めるのは、たとえ平行世界だとしても気持ちがいいものではないな。」

 ガッツも、自分のすぐ目の前にある死体を見て、確かにそうだろうと納得する。但し、あまりにもそっくりな外見をしているため、ヴァレンタインが抱いている感覚とは別な意味ですっきりしていないだけであるが。

 ガッツ「ああ、そうだな。それよりも、今は目の前にいるあの首なし甲冑野郎を何とかしなくちゃなんねぇな。」

ガッツの首の後からは、止めなく血が流れている。原因は、目の前にいる【デュラハン】と呼ばれる首のない騎士に原因があった。ガッツは、恐らく【自分がいた世界から来た】ということを確信する。甲冑の首のあたりを見ると、【ベヘリット】と呼ばれるものが紐に括りつけられるのが見えたからだ。

 ガッツ「そうか、あんたも捧げちまったんだな。」

ベヘリット。それは、ガッツがいた世界に存在する卵型をした、一見するとアクセサリーのようなものである。普段は、人間の顔のパーツがバラバラに並んでいるという何とも不気味な見た目をしており、たまにそれらが動いたりする。しかし、これはアクセサリーといったような生易しいものではない。これは、何者かがこの世に送りつけてきたもので、これを持つものが世に絶望したときに真価を発揮することとなる。これを持ち、世に絶望すると、各パーツは正しい位置に並び、血の涙を流す。すると、【ゴッドハンド】と呼ばれる4人の守護天使を呼び出すことが出来る。そして、彼らに何かを【捧げる】ことにより、【使徒】と呼ばれる人間を超越した存在になることが出来るのだ。

 デュラハン「そのとおりだ、黒い剣士ガッツよ。私は、確かにわが主たちに【捧げた】のだ!」

首のない騎士は、ガチャガチャ、というよりはガタガタという音を立て、一歩、二歩とこちらに歩み寄ってくる。その音を聞くと、強大さと絶対的なものをガッツたちに感じさせるものだった。