第三章 BERSERK 5
司馬懿「うむ。それでだが、どうやら何か不穏な空気がある三つの次元で観測されたのだ。まず、お前たちが向かう20世紀のネバダ。次に平行世界の19世紀イギリス。そして、もう一つはこの世ではない場所で観測された。恐らく、これから我々が体験したことがないようなことが起こるのではないかと危惧しているのだ。」
リヒター「ほう?今まで体験したことがないこととは一体?」
司馬懿の言葉に疑問を抱き、少し前のめりになりながらそう質問する彼に対し、帰ってきた答えは
司馬懿「戦争だ。それも、異次元を巻き込んだな。」
その言葉に、三人は驚きを隠せずにいた。幸い、プレミアムシートに乗っていたのは彼らだけで、添乗員もこのシートにはあまり近づかなかったために大きな騒ぎにはならなかった。
ただ一人、この場で物静かにしているのは辻谷だけであった。それは、あたかもすべてを知っているといわんがばかりの態度である。
辻谷「やはりか…最近何か時空省内でおかしな空気が流れていると思っていたら、こういうことであったか。」
普段はお茶らけた雰囲気をもつ辻谷であるが、場合によっては別である。そう、危急存亡のときにおける彼はだれよりも頼もしいのであった。
陸奥【へぇ、久しぶりだな。いつもの辻谷さんとは違うこの威圧感を感じたのは。恐らく、これほどの気を発する人間は不破北斗以来かもしれねぇっていう、この感じをな。】
だが、この場にいるものはこの威圧感を何とも思わないのかは知らないが、皆整然としているのみであった。しかし、この威圧感は、機長やほかのシートに座っている一部の客には気づかれていたようではあったらしいが。
司馬懿「どうやら、貴公にはすべてお見通しであるというわけか。それなら話は早い。いまそちらに特別な回線をつないでいるところだ。―そうだ、回線がつながる前に、これを見て欲しいのだが…」
そうして見せられたのは、ある男の画像だった。それは、すべてが漆黒で覆われた、一人の剣士であった。