第三章 BERSERK 6

 そう、その時見せられたのは、今まさに正面で咆哮を上げている一人の剣士であった。あの時、我々が見せられたのは、この男がこの世界へ何者かの手によって連れてこられたということ。そして、彼がこの事件を解決するためのキーマンになるのではないかということだった。

どうやら、この黒い剣士ガッツは【使徒】と呼ばれる怪物たちを追って旅を続けていたそうだ。理由は何かといえば、【復讐】のためだという。一体何に復讐しようとしているのか、それは、彼の【親友】である。

辻谷【さて、これからその復讐者の恐ろしさを目にするというわけか。あの、【狂戦士の甲冑】によってさらけ出される彼の復讐心が】

 ―さて、これから話すのは狂戦士の生い立ちである。よろしければ、こちらの曲を聞きながら読んでいただければいいかもしれない。 →sign2

 彼が生まれたのは、母親の死体の中からだった。戦争によって、殺された母の亡骸からである。恐らくであるが、この時から、彼は苦難の人生を歩むこととなるということを暗示づけられていたのかもしれない。物心がついてきたときから、彼は傭兵として、己を拾ってくれた養父と共に戦場を駆っていたが、疑心暗鬼に駆られてしまったその養父を咄嗟に、半ば事故で殺してしまった。この時、自分の愚行がほかの傭兵仲間に露見し、追われる身となってしまう。逃走中に崖から転落するが、他の傭兵団に拾われることで一命をとりとめる。この時でまだ年齢11の時である。4年後、彼は戦場で運命的な出会いを果たす。傭兵集団【鷹の団】の団長【グリフィス】との出会いであった。

 グリフィスは、大きな夢を持っていた。それは、【自分の国を持つ】という夢である。傭兵の身でありながら、そんな彼にひかれたのか、ガッツは彼と共に戦場を駆け巡った。そして、グリフィス達は自分たちが拠点としていた王国【ミッドランド】の正規軍に加わり、団長の彼は貴族たちから爵位を賜るまでになった。

 しかし、ガッツは順風満帆な鷹の団を抜けることを決意する。本当にここまででいいのかと自分の境遇に疑問をもったためであった。グリフィスは絶望した。すぐ後彼は、ミッドランドの王女の部屋に無断で入りこむという、階級社会のはびこっているこの国では、やってはならぬ愚行を犯し、その後一年間拷問を受け続けることとなる。

 その後である、自分の道に迷っていたガッツが鷹の団に戻ってきたのは。ガッツは、グリフィスのことを聞き、彼を助け出したのだが、もはや彼は、生きているのがやっとの状態にまでなっていた。グリフィスは絶望した。己の愚行によってもう夢へと届かないのであると。そして、地獄が始まった。そう、グリフィスも【ベヘリット】を持っていたのだ。しかも、【ゴッドハンド】と呼ばれるものになるための覇王の卵と呼ばれる特別なものであったのだ。グリフィスは、己の夢のために仲間を捧げたのだ。ガッツともう一人を除いて。

 そして、無事に生き残ったガッツであったものの、ゴッドハンドによって【烙印】を刻まれることになったのだ。生贄の烙印を。そして、彼はその烙印にまとわりつく怪物たちと不眠不休の人生を今日まで続けているのである。そう、まるで彼に狂えといわんばかりに。