第4章 異世界侵攻録 1

 呂布軍は、この世界を守る護庭十三番隊の隙を突くことを決定した。そのために必要なことは、軍師陳宮によって二つの前段階を踏むことが大事であった。一つ目は、奇襲である。何しろ、彼らの部隊は、立派な塀に完全に覆われた巨大な屋敷の中だ。ゼーナが開発した時空移動機は、絶対とは言えないものの、奇襲部隊をほぼ確実にその中へ送りこむことは可能だ。しかし、それでは精鋭たる呂布軍であっても袋小路にされる可能性が高い。では、どうすればよいか。答えは、目の前の捕虜が解決材料になる。

 

 それが、四番隊に所属する彼を囮に使うことだった。

山田「す、すみませ~ん。」

 情けない声が、第4番隊の屋敷の前に響き渡る。どうやら、その声に反応してか、隊の一人が扉を開けてしまった。

陳宮「おやおや。これは、これはご機嫌麗わしゅう。」

 しかし、扉の向こうには呂布軍軍師陳宮と、彼の直接の舞台である工作兵士が待ち構えていた。その台詞と同時に両手で二回音を鳴らして合図をすると、一斉になだれ込み、人がほとんどいない第四隊を制圧した。

 陳宮「さてさて、お役目ご苦労でしたな。ですが、ですがまだまだここに残ってもらいますぞ。その代り、縄は少し緩めにしてあげますぞ。ほどけるぐらい緩めは致しませんが。」

 花太郎は、もし縄を緩めたとしても決して逃げようとは思わなかった。とてもじゃないが、治癒に関する術は秀でているものの、武勇はまったく駄目な彼は、はい、わかりましたと返事をするのみ。筋骨隆々とした呂布軍の精鋭に対して逆らおうとはまったく思わなかった。

 花太郎「そうですか。はぁ、なんでこんな目に。ついてないや。それにしても、みんなが出払っている間にこんなことになるなんて。いまここにいる隊長クラスの人は、日番谷隊長と狛村隊長、それと乱菊さんぐらい。早く気付いてくれれば。」

 

 同じ頃、呂布軍別働隊は夜襲を仕掛けるために別行動をとっていた。呂布の娘【呂玲綺】は、護廷十三隊のうちの副隊長が一人、松本乱菊と交戦していた。

 玲綺「ふっ、やるな。私と互角な女は初めてやもしれん。」

 松本「ふふ、そうね。うちの隊長と比べたらまだまだだけど、貴女も腕が立つじゃない。」

 玲綺「その言葉、ほめ言葉として取っておこう。私はお前を倒して、隊長格の奴と勝負したいからな。我々の計画のため、斃れてもらう!」