第4章 プロローグ  2

 我々の住む世界とは違う、19世紀の平行世界のイギリスの北海。通称【仮想19世紀】と呼ばれるこの世界に、ある男が時空を乗り越えて現れた。彼の名は、【ルガール・バーンシュタイン】。20世紀末期に、武器商人として世界中の覇権を裏で操っていた男である。彼も、呂布と同じく今作戦の先陣を切り、この世界の覇権を握らんとやってきた男だ。彼はゼーナの話を聞き、彼女の意見に賛同。この作戦に同意し、自信が所有する戦艦【ブラック・ノア】ごと時空転移させ、とある場所を砲撃するためにこの場所を陣取った。

 ルガール「さて、目標地点はここで構わん。ヒメーネ、準備はできているか?」

ヒメーネとは、ルガールの二人いる秘書のうちの一人である。燃えるような赤い髪をした女性は、ルガールに対して軽く会釈すると、

 ヒメーネ「準備が整いました、ルガール様。」

 ルガール「ふっ、そうか。準備は整った。これで、宝の持ち腐れとなった私のコレクションを一つ試せるというわけか。この【51センチ連装砲】を搭載できるのは、私が巨万の富を費やして建造した【ブラックノア】だけだからな。」

51センチ連装砲。それは、歴史上実現できなかった大砲である。元々は、第二次世界大戦中、旧日本軍が戦艦大和を超える超弩級戦艦、通称【超大和型】と呼ばれる戦艦に乗せる予定であった大砲であった。しかし、超大和型は、日本が戦争に敗れたため、それと同時にこの大砲が作られることもなかった、その筈だった。しかし、ルガールはこの大砲を実現させた。時代はミサイルと戦闘機の時代になり、戦艦が過去のものとなりつつなったのにもかかわらずである。それは、全てこの作戦のためであった。自身は、この大砲によって砲撃される場所から500メートルのところまで移動し、指揮はこの世界にも存在する旧型の無線機を通し、戦艦ブラックノアに指示を出していた。

 

彼のもう一人の秘書、アジア系の美女アヤは、この大砲を発射する許可を下ろしてほしいというメッセージを送る。ルガールの返事は、もちろん【許可する】であった。

 ルガール「許可する。発射準備ができ次第、すぐに砲撃を開始せよ。」

ルガールが許可を出すと、50キロ離れた場所から、歴史上成しえなかった、最も巨大な砲弾が、【黒の教団】と呼ばれる施設に向け、地獄の穴を空けんがため、発射されることとなった。