第4章 異世界侵攻録 6
隊長の二人は、助けた部隊に指示を出した後、そのまま他に被害を受けている者たちがいないかどうか捜索を開始した。
日番谷「このままじゃ、被害が広がる一方か。くそ、瀞霊廷からも火の手が上がってやがる。一体敵にあれだけの部隊がどこにいるっていうんだ!」
【瀞霊廷】とは、この世界における貴族街のことであり、護廷十三隊の暮らす場所のことである。巨大な壁に覆われているが、その壁を超えて見える煙で彼はそう判断したのだ。しかし、その日番谷の言う火の手の正体は、敵軍師陳宮によるものである策の一つである。勿論、建物が燃えている為に煙が上がっているものもあった。しかし、それだけではない。ただ単に、大量の枯草に火をつけているものが煙の正体のほとんどだった。こうすることで、被害を大きく見せ、複数カ所で同時に火の手が上がったように見せることで、大軍勢による奇襲に見せているのだ。
陳宮「ほほ~、どうやら、引っかかった者たちがいるようですな。こちらにおびき寄せられて、寄せられて来ておりますぞ!」
巨大な城壁のような場所から、陳宮はことの一部始終を見つめていた。まさか、ここまでうまくいくとは軍師たる彼でもよい意味で予測がつかなかったようだ。
陳宮「さあて、そろそろ、そろそろ出番ですぞ!呂布殿がその場所で待ち構えておりまするが、果たして、あの死神たちはどこまで出来るか。フフフ…」
飛んで火にいる夏の虫。彼らの状況は、まさにそのような言葉がふさわしいものとなっていた。こうなれば、軍師陳宮の描いた通りのシナリオにそって物語が進むだけである。そいて、現場に急行していた日番谷と狛村の目前に、【それ】は現れた。
狛村「む?あの黒ずくめの男は何者だ?」
全身黒の鎧を着込み、触覚に見え派手な頭飾りをつけ、巨大な長柄武器【方天画戟】を持った男が仁王立ちをして彼らの前に現れた。
二人は、鎧を着た男から数メートル離れたところで立ち止まり、改めてその男が何者かを確認する。そうして、確認できたことは只一つ。この男は、じぶんたちの敵に相違ないということだった。
日番谷「おい、まさか。」
狛村「うむ。恐らく、敵の将とみて間違い無いだろう。一応、いつでも戦闘に入れるように準備はしておこう。」
日番谷は狛村の提案を了承すると、目の前の男に詰問を始めた。
日番谷「おい、そこのお前!何者だ。まさか、敵の軍の将じゃねぇだろうな?」
彼は、愛刀【氷輪丸】をその相手に向ける。男は、その刀を見つめた後、怯むどころか、逆に笑みを浮かべはじめた。
?「ふっ、そうだな。俺はただの将ではない。」
男は、得物を地面にたたきつける。それを見て日番谷は怒りを覚え、大声で「じゃあ、アンタは何もんだ!」と叫ぶ。
?「そうか、なら教えてやる。俺は呂布、字は奉先。俺がこの軍の総大将だ!」
咆哮。その表現が正しいだろう。呂布は、両手で武器を構えなおし、一瞬のうちに振り下げた。日番谷は、間一髪のところで避けることが出来たが、地面には、巨大なクレーターができていた。