異世界侵攻録 7

 日番谷「なっ!なんつう馬鹿力だ!狛村隊長!大丈夫か!」

 狛村「ああ、何とか無事だ。…それよりも、あの男、自分のことを総大将と名乗ったな。」

彼らの目の前にいる、威圧感を漂わせ、今すぐにでもこちらに飛び掛からんとしている。武器を構えなおすと同時に、男は虎のごとき眼光で二人を見ると、何故か笑みを浮かべはじめた。

 呂布「ふっ、話に聞いた程よりは強そうだな。その雰囲気、その面構え。勝負する価値はありそうだ。」

呂布は、一歩一歩日番谷たちに近づき、どちらから先に倒そうか。ただそれのみを考え始めていた。

 日番谷「ああ、その総大将さんがこっちに向かって来てるみたいだが。」

 狛村「俺たちのうち、果たしてどちらから襲い掛かるのか。斬魄刀の準備だけでもしておかねば。」

二人は、斬魄刀【ざんぱくとう】と呼ばれる、一見日本刀のように見える刀を構える。斬魄刀は、隊員が身に付けるもので、【始解】と呼ばれる、武器の力を引きだすことが出来るという点で特異がある。隊長格ともなると、【卍解】と呼ばれるその武器の更なる真の力を開放することが出来るという。

二人は、彼が襲い掛かった瞬間に始解(例えば、日番谷の場合は、【霜天に坐せ】。狛村は【轟け】と唱えればよい)すればいい。ただ、それだけだ。片方に襲い掛かるならば、片方が始解することで戦いを有利に出来る…そう言う見込みだった。相手は死神ではない普通の人間。勝ち目は十分にあるはずとみこんだのが間違いだった。だが、二人は三国志を読んだことがなかったことが痛かった。この呂布という男、全盛期の【劉備】【関羽】【張飛】を同時に相手をしてもまったく動じなかったという伝説を持つことを知らなかったのだ。

 二人「何…だと…!?」

呂布は、一瞬で二人の間合いまで迫り、戟を素早く振りぬいた。二人は慌てて間合いを取ろうとするが、圧倒的な攻撃範囲と距離を誇る彼と、彼の得物に対して防戦せざるを得ない状況となっていた。

 呂布「貴様ら、どうやら完全にこの俺をなめていたようだな。」

日番谷は左腕を、狛村は右足を斬られていた。一瞬の出来事に、二人は只々茫然とするのみだ。

 日番谷「いかん。こいつはやべぇ。あの男、ほんとに人間か?」

彼の目の前には、間違い無く、中国史の中でも、伝説と化した最強の男の力をこれから味わうこととなる。

一方で、仮想十九世紀でも、ルガールの猛攻に、少年が勇敢にも立ち向かっていた。