異世界侵攻録 12

意気高揚、その言葉が今の呂布にはふさわしい。遂に、己の武勇が存分に振えるようになった彼は、歓喜していた。

一方、ルガールと戦っている四人は苦戦を強いられていた。多勢に無勢であるはずの彼らが、50歳近いタキシード姿の男にダメージを与えられないという状況になっていたのだ。

 アレン「くっ、まったく駄目か。あの人、本当は千年伯爵が作り出したAKUMAじゃないのか?」

 エド「ああ、俺もあのオッサンがホムンクルスかなんかと思いたいぜ。いや、ほんとうによ。」

 アル「ほんと、馬鹿げた身体能力だ。僕は疲れないからいいけど、兄さんたちがもうバテバテになるなんて。」

アルフォンスは、まだ小さかった頃に兄のエドワードと共に無人島で修業したことを思い出していた。あれだけ厳しい訓練に耐え、それから錬金術の師匠【せんせい】の元で術のみではなく、体力や武術もしっかり鍛えてもらったのだ。だが、この男には師匠から教わったすべてを遥かに超えていた。

 エド「そりゃそうだ。多分、あいつこの世の格闘技全部極めてやがる!」

 銀時「なっ、なんだってー!そりゃ俺らにかちめねぇーじゃん!」

 アレン「ええ、本当にそんな気がしてきました…て、坂田さんとかいいましたっけ?」

彼の言葉に、銀時はやる気のない声で「ああ、そうだけど?なにかよぉー」と答える。

 アレン「あの~いい加減隠れてないでそっから出てきてくれませんか?あなた、木刀持ってるじゃないですか。」

彼の言う通り、銀時は、今の今まで全く戦闘に参加していないのだ。

 銀時「いやいや、俺まだ死にたくねぇし!あんなとこ突っ込んだらおれ死んじゃうから。」

 アレン「そんなこと言わずにとっとと出てきてくださいよ!こっちは大変なんですよ!命削ってんですよ!」

 銀時「そんなのは勝手にお宅らがやってりゃいいんだよ!おれまだローンが三十二年残ってんだよ!俺が死んだらどうするっていうの!」

 アレン「ちがうから、それ作品違うから!そんなダダこねないで早く助けてくださいよ!」

 銀時「いいや、絶対ここから離れないよ!離れたら

そんなやり取りを見ながら、エドワードたちはこのような感想を抱いた。

 アル「…にいさん。僕、あんな大人になったらいけないって心から誓うよ。」

 エド「…おう。」

そんな四人を見て、ルガールは次第に退屈になったのか、欠伸までし始めた。

 

 ルガール「まったく、君たちには失望させられる。これではやる気が出ないではないか。誰か、他に強い者はいないのかね?」

しかし、それはこちらが攻める好機を作り出すことが出来たということである。本人たちはまったく気づいてはいないようだが。

 ルガール「興ざめだ。この者たちの相手は辞めだ。さて、私はさっさと目的の物を頂戴するとしよう。本当にそれがあるのかは知らんがな。」

そうして、彼は混乱に満ち溢れる協会の地下に潜りこんでいく。して、残りの四人を完全に無視して。

 銀時「いやいや、俺はパスタより白ごはんがうまいにきまってんだろ!」

 アレン「いやいや、やっぱりパスタこそが至高!決まりでしょう!」

 エド「ああ、こんなことになるはずじゃなかったんだが…」

 アル「兄さん。ぼくさ、もうどうしたらいいかわかんないよ。取り敢えず。話の内容が変わりすぎだよ…。」

その頃、協会の外でも騒ぎが広がっていた。