異世界侵攻録 呂布奉先の軍師 7

そんなことを露知らずの修兵達を、暗闇に紛れて観察する鬼鮫たち。どうやら、こちらの作戦に気づいていないようだ。

 鬼鮫「やれやれ、相手の強者たちがほとんど留守で助かりましたねぇ。まぁ、軍師殿ははじめからこの時を狙っていたようですが。さて、どうやら準備ができたようですね。同時進行でほかの策も進めているようですが、こちらの準備が先に終わりましたか。では、最後のした準備。よろしくお願いいたしますよ。」

鬼鮫の指示通り、最後の準備が整ったことを確認した工作兵の一人が、先ほど捕縛した【山田花太郎】を利用した策を始めた。

 再び9番隊の屋敷に戻る。一応、仕事はほぼ終わった修兵たちであった。残すは、花太郎が原稿を編集部に持ってくれればすべて終わりである。そして、その彼がやってきた。

屋敷の外からは、どこかで聞いたことのある情けない声がする。どうやら、花太郎のようだ。

 修兵「お?やっと来たか。まったく、待ちくたびれたもんだぜ。さて、今戸を開けてやっから待ってな。」

だが、それがまずかった。玄関の扉を開けたもののそこには誰もいない。聞き間違いだったのかと思い、扉を一旦は閉めたものの、又弱々しい声が聞こえたので、再び戸を開けてみた。それでも、やはり外には誰もいない。やぱっぱり聞き間違いだったのだろうと思い、玄関を再び閉めた。しかし、又外から声がするので、もう一度だけ扉を開けて確認した。そして、そこにいたのは…

 鬼鮫「どうも、失礼いたしますよ…【水遁!爆水衝波!!】

鬼鮫自身も、まさかこんな方法で計略を遂行できるとは思ってもみなかった。山田の声を、録音したMDで流し、念には念を入れるために、3回それを繰り返す。そうすることで、確実にこの術を発動させ、より効果的に技を使うことができた。

 

しかし、こんな方法で簡単に引っかかるとは、相手は相当間抜けだなと鬼鮫は率直な感想を抱いた。いや、普通は周りをよく見てから確認するだろうと思った鬼鮫だったが、案外あっさりうまくいった。こうして、9番隊屋敷を中心として、工作兵が作った水路や、無数にある巨大な塀をつたい、貴族街およびその周辺は甚大な被害が出た。原因は、約一名の判断ミスだった。