異世界侵攻録 逃亡と進行 9

 元就「ああ、驚くのも無理はないさ。私もさっき聞いたときは驚いたよ。どうやら【彼女】たちは、昨日こちらの世界に迷い込んだ【エルザ・スカーレット】君が付き添いであたっているようだけど。」

 司馬懿「ほう、そうか。今度も女性か。一体全体どうなっていることだ。…それよりも、精神的にきている彼らを見てやらなくていいのか?」

 司馬懿は、休憩室後方にいるアレン、リナリー、神田の三人に目を向けた。三人とも、今まで起こったことに対して未だに向き合えないのか、どこかうつろになっているようにも見える。しかし、気が滅入らないようにしているのか、どこか空元気とも見えた。どちらにしても、精神的に参っているのは間違い無いようだ。

 元就「そうだね、表情が少しうつろになってるようだ。…私が見て来ることとしよう。司馬懿殿はどうするつもりかな?」

 司馬懿「わたしか?このあと何もすることがなくてな。まぁ、やることがあるとすれば、あの山本の部下の宇和何とかの世話をせねばならないな。全く面倒なことになったわ!しかも、時空乱流観測室で何やらおぞましき者が観測されたらしいということも聞いた。丁度いい機会だ。我が本国もそうだが、世界中でも異変が観測されているらしい。」

 元就「わかった。そちらに向かってくれ。私は彼らを見て来る。」

会話が終わると、司馬懿はそのまま休憩室を出てまっすぐ観測室へ移動を始めた。元就は、そのまま休憩室にとどまり、4人のもとへ歩み寄る。彼らの表情は、未だに何が起こったのか全く分からないという色をしていた。それもそうだろう、いきなり現れた男に自分たちの帰る居場所をを破壊されたのだ。そうした顔になるのももっともだろう。元就はそう感じた。

 元就「やぁ、元気そう…では無いようだね。あんなことがあったんだ、当然そうした気持ちになるのは私も分かるよ。これでも、戦争ばっかり起こっていた時代の人間だからね。そんなことはしょっちゅうさ。でも、それはやっぱり悲しいことだ。特に、君たちの年齢でこんな経験をするなんてのはまずないだろうし。つまりはね、あの~、そう。…辛かったね。ああ、又話が冗長になってしまったみたいだ。」

 うまく言葉がまとまらず、恥ずかしいのかどうなのかよく分からない状況になってしまった元就は、いつもの癖で話が長々となってしまったようだ。しかし、そんな彼に対して、リナリーはやさしい口調でこう返してきた。