妖怪退治 佳境 17

 鬼太郎「なっ!」

今までの力で手を抜いていたということをこの時鬼太郎は悟った。そう、今まで彼はあくまで相手の力量を図るために本気を見せていなかったのだ。モールは、もともと口数が少ないのだが、本気の彼はさらに口数が少なくなるようだ。何も言わず、ただ相手を殺すためだけにある、要は、殺戮マシーンダースモールへと変貌する。

 

柄の両端から伸びる赤い光刃が、鬼太郎めがけ縦横無尽に襲い掛かり始めた。

 鬼太郎「このままでは埒が明かないか…。なら!」

鬼太郎は、相手の驚異的な速度についていくため、霊毛チャンチャンコだけでなく、懐からオカリナを取り出した。そのオカリナの口をつける部分から棒状のものが飛び出し、剣のように武器へと変化した。

 モール【ほう…面白い。妖怪とはまた人間とは違うものなのだな。が、しかしだ。…それだけでは我々シスには勝てんだろう。】

モールがそう心の中で思うのはおかしな話ではない。シスには、絶対彼らに勝てる保証があるのだ。いくら相手が妖怪であったとしても、ダースモールには勝てないのだ。

 鬼太郎「くそ、なんて速さだ。右から刃が飛んできたと思ったら今度は左から、上からと思ったら下から刃が襲ってくる。」

彼の言う通り、モールの剣さばきは常人のそれではない。それもその筈、彼の剣技は、■■■二人がかり相手でも余裕で相手をすることができるほどの強さを誇るからだ。鬼太郎がよく持ちこたえているのも無理はない。もし、かごめが松明丸の相手をしていなければ、今頃彼は八つ裂きにされていたかもしれない。そんなさなか、一つの決着がつきそうになっていた。かごめがどうやら、破魔の矢で松明丸を仕留めそうなところまで追い詰め始めたのだ。