第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】 11

  タイミングは間違い無い。狙う場所も定まった。後は、一撃で仕留められるように、この弓をできるだけ引き絞るだけ。そして、その瞬間は訪れた。

 松永「さて、君たちの猛攻はここで終わりかね?そろそろ私も飽きてきたのだが?」

 辻谷「そうかい!良いぜ、俺も飽きてきたところさ。でもよ…」

辻谷は、今まで繰り返してきた木刀の振る速度を遅くする。松永はその動きにつられ、後ろへ避けると、そこには巨大な砂の中から僅かに飛び出している石版に躓いた。

 

 辻谷は、この一瞬を狙っていた。そのまま態勢を崩した松永の後ろには、巨大なUの字をした石版に、もたれかかるような形で倒れこむ。そして、そこに飛び込んでくるのは、閃光の如く飛び込んでくる一本の矢であった。

 辻谷「これで終わりだ、松永。自身の犯した業を呪うんだな。」

矢は、辻谷たちに勝利をもたらす為に、空気を裂く音を立てながら、狙った獲物めがけ一直線に飛んでいくのであった。

 

 そのころ、四人の守護天使を見上げる一人の剣士は、復讐の対象者がいないことがわかると。すぐに興味がなくなってしまっていた。しかし、目の前にいる半死半生の怪物には気がかりでいた。何故かというと、この異空間から逃れる方法はただ一つ。目の前の怪物が只一言、【捧げる】と答えるか、【捧げない】と答えるか、それだけである。

 ガッツ「さて、アンタはなんて答えるつもりなんだ?もう一度俺と戦いたいのか、それとも、諦めるのか。」

どっちにしろ、欲望にまみれたゴッドハンドたちは、因果律と呼ばれる【運命】の決定権を握っている。いずれにせよ、今回は偶然ではあるが、本来は真っ先に生贄に捧げられるはずの自分がその対象から外れている。生贄になるのは、この砂漠をさまよう、砂漠に死した有象無象の魂だ。それでも、彼の返答次第で、自分がどう行動するのか決定される。

 ガッツ「まぁ、ゆっくり考えな。決めるのはてめぇの意志だ。俺は、ただあんたの決めた道に付き合う覚悟はできている。そこは何も考えなくてもらって構わねぇ。」

 だが、本当に心の底からそう思っているのかはまた別の話だ。彼は、何度も己の欲望に負け、人ならざる怪物と成り果てた者たちを見てきたからである。