第三章 欲望の守護天使【ゴッドハンド】 12

ガッツにとっては、使徒という怪物は復讐を成し遂げるための道しるべだった。こいつらを追っていけば、あいつに出会える。しかし、あいつが再び人間としてこの世に転生したことで、もうこの異次元空間にはいないことは理解できていた。

 ガッツ【不思議だ、連中と同じ筈なのに、こいつにも憎しみを感じているのに、何がちげぇってんだ?】

憎しみの相手は、あいつだけではない。目の前にいる怪物も、本当ならば憎むべき相手の筈だ。しかし、先ほど目の前の騎士に関して、ゴッドハンドから話を聞いた後では、心境の変化がやはり起きてしまうのだ。

 ガッツ【そう、俺の旅の目的は復讐のためだ。だが、復讐の先にあるのは、まさにこれじゃねぇのか?こう成り果てちまうのがオチじゃねぇのか?】

最近、彼はおのれの復讐に関して強く感じるようになっていた。何に対してか?それは、復讐の果てにある未来である。 このまま復讐を続けて何になる?復讐しても、あいつらが帰ってくるわけでもない。ならば、何故なのか?答えは未だ見つからないままだった。

 ガッツ「今は、そんなことを考えても無駄だ。仕方ねぇ、待つか。」

考えても仕方がない。剣士は、目の前にいる相手に、すべてを委ねてみようと考えた。今は、そうするしか方法が無いと考えた彼は、一旦気持ちを落ち着かせて、地べたに胡坐をかいた。恐らく、目の前の怪物は、すぐに答えを出す。そう感じたから、ここは待ってやろうと判断した。

して、目の前にいる怪物は心を決めていた。これで二度目だが、今度は前の時のような絶望は無いはずである。今回捧げるのは、今まで手なずけてきた死霊たちである。それでも、その怪物にとって、問題は一切なかった。後は、只一言唱えればいいのみ。

 デュラハン「…げる」

約束の時、来たれり!天使長ボイドは高らかにそう宣言した!すると、どこからともなく死霊の魂がたちが、デュラハンの周りを不気味な光を放ちながら飛び回り始めた。

 ガッツ「そうか、又捧げちまうのか。」

なら、もうだれにも止めることはできない。黒い剣士は、背負っている巨大な剣を両手に持つ。

 ?「おっと、ここで剣を構えるのはやめていただこうか。今戦ってもらうのは非常に困るのでね。」

一体どこから現れたのだろうか、声がするほうを振り向くと、無数の蝙蝠がガッツを取り囲み始めたのだ。