第三章 救援4

 途中までは完璧だった。しかし、最後の最後で失敗した。原因は、詰めの甘さだった。

彼がこの国に来るとき、必ず来るところがある。自信が気に行っている茶室だ。彼は、茶室の天井にひっそりと隠れ、その瞬間を待った。して、その男はやってきた。今でも、一部始終を覚えている。茶を入れる動作は、後から考えれば少々間違っている点はあったものの、不思議と誰よりも日本人らしく見えてしまった。

 だが、流暢にただ見つめるだけはできない。時は来た。その一瞬を見逃さず、コンマ零秒の狂いもなく、辻谷は武器を振りぬく。とはいっても、精々驚かす程度で、打ち込むつもりはさらさらなく、コンマ一ミリのところで止めるつもり…それが、その気持ちが全て甘かった。

 始めは何が起きたかわからなかった。ただ、気づいたときには、自分は茶室から5メートル離れた池に落ちていた。そう、考えたくもなかったが、辻谷の斬撃をつかみ取り、振りおろした力を利用し【投げ飛ばした】のである。

 後々、この戦いについて更に詳細を語ることとなるが、先に結論からノベルとすると辻谷は間違い無く敗北した。…何故今頃このようなことを思い出すのか。自分でも分からない。只、思ったことが一つ、同じ過ちを繰り返してしまうのかという不安からだろう。しかし、この考えは後に、自ら否定することになる。

 再び、辻谷の意識は正面の敵に向けられる。うちはイタチも、暗く、赤い平原に光るその眼光で、眼下にいる者たちを見下ろす。

 イタチ「どうやら、無事に逃げたようだ。ここもそろそろ崩壊する。俺は別にお前たちと対するつもりはない。」

 リヒター「どういうことだ?ここがもうすぐ崩壊する?」

リヒターの問いに対し、イタチは表情を一切変えることなく、後ろを振り返る。

辻谷達も、彼が向く方向に視線を向ける。よく見ると、暗い空間から光が漏れ出ていることが確認できるではないか。

その隙間から、何か音が聞こえてくる。その音と共に、何やら光まで見えている。次第に、音や光に合わせ、空間にひびのようなものが見えていた。

 

一体、何が起こっているのか。それは、外からの視点に変えると理解できる。

 ランサー「さて、俺の出番はそろそろだな。おい、犬の兄ちゃん。後どんくらいだ?」

槍を構える神代の英雄は、目の前の青年に発破をかけるように声をかける。声をかけられた青年の名は【犬夜叉】という。銀色の髪に赤い着物を着た青年は、巨大な剣【鉄砕牙】を構え、目の前の黒い渦に対し、もっとも効果的な攻撃を放ち続ける。