泥田坊 1

 式「さて、話が逸れたけど、その妖怪も確か複数の声があっちこっちで聞こえてたっけ。」

 潮「おお、そうそう。俺も似たような話を道すがら聞いたんだ。なんか【たをかえせー】とかいう声が夜中聞こえるらしいぜ。」

成程、間違いないだろう。横で目を閉じながらしみじみと話を吟味する鬼太郎の父親は、今まで出てきた情報を整理する。間違いない。あの妖怪が今回の事件のキーマンだ。

 

 目玉の親父「うむ、間違いなかろう。皆が追っているのは【泥田坊】という妖怪じゃ。」

 式「泥田坊?なんだ、それがこの妖怪の名前なのか?」

 目玉の親父「そうじゃ、しかしじゃ、それだけでは説明できんところかちらほらあってのう。…まずは、簡単に泥田坊の説明をしたほうがいいじゃろう。」

 

泥田坊。古くは江戸時代の妖怪絵師。鳥山石燕の絵にも描かれてある妖怪である。この妖怪は、田んぼをないがしろにしたものを【田を返せ】とののしる妖怪で、近代では、戦争で亡くなった田んぼ農家の怨念もこの泥田坊になるといわれている。また、この妖怪は片目がなく、手の指が三本しかない。

 

 目玉の親父「という妖怪じゃ。恐らく、その近辺は昔豊かな田んぼが広がっていたのじゃろう。しかし、この街を近代化する際に、減反政策や道路工事、再開発等で消えていったんじゃ。」

 

成程、確かにその妖怪は泥田坊ということで間違いない。しかし、目玉の親父は何かどこかで引っかかっていた。…そう、子の妖怪には、幻覚や幻聴を見せる力は皆無なのだ。

 犬夜叉「んじゃ、どうゆうことだよ。そいつのほかに誰か手を貸してやっているってことなのか?」

 目玉の親父「その可能性が十二分にありそうなんじゃ。もしかすると、二人組やもっと複数おるかもしれん。じゃが、これだけの人数がいれば恐らく何とかなるはずじゃ。ここで7人逢うたのも何かの縁かもしれん。目的も一緒ということもある。ならば、ともに行動するのがよいと思うのじゃが、良いかの?」

 

答えは、一同賛成だった。そうと決まれば、ここを後にして行動に移すことだ。