逃亡劇、そして復活 19

 その男の視界には、いまだ敵は見えていなかった。しかし、目には見えずとも、辺りから殺気を感じ取る。これは、今まで数多の戦場を駆け抜けてきた彼だからこそ感じ取ることができるわずかなものだ。

 

 ?「さて、いずこから敵は押し寄せて来ようか。敵は四方すべてを囲っていると見える。ならば、敵の守りの薄いところから突破し、無事次官殿を救出せん。…いざ参らん、敵の奥地へ。」

そのまま、彼は敵陣の中央突破はさけ、守りの薄いところから攻めようとする予定だった。しかし、それは失敗に終わってしまう。なぜなら、時空省が送り込んだもう一人の助っ人のせいだ。彼の名は【ニケ】。魔王を撃退したということで実力があると時空省に認められてこの度作戦に参加したのだが、ある失態を犯してしまい、敵に追われているのだった。

 

 魔物A「まてーいい!そこの不審者!!」

 魔物B「明らかに怪しいぞ!しかも、カヤ様がおっしゃっていた勇者とそっくりじゃないか!!」

 ニケ「いやぁあ、違います、違うと思いますよぉ~。こんなところにそんなたいそうな人いるわけないじゃないですか!!」

 魔物A「じゃあなんで逃げてんだよ!増々怪しいじゃねぇか!大人しく掴まれ!ってかお前勇者なんだろ!もうちょっと堂々としててもいいじゃねぇか!」

が、ニケと名乗る少年勇者にはそうもいってられない事情があったのだ。それは…

 ニケ【いや、今めっちゃウン〇行きたいのに無理ですわ!】

という何とも情けない理由だった。