欺瞞 28

 ベンと名乗る老人は、ここが一体如何なる場所かを説明する。その前に、山本に一言付け加えることがあるようだ。

 ベン「さて、説明する前にだが、この先を進むと君に多くの受難が待ち構えているという事だけは言っておこう。先ほどの数学のテストはほんのお遊びにしかすぎん。たとえ、どんな絶望が待ち構えていたとしても、心が負けてはいけない。いいね。」

 

老人の言葉に対し、山本は力強い返事で「はい」と返事をする。山本は、過去に経験したあの事件を超えるほどの地獄は無いと考えていたためだ。

 ベン「なら、説明しよう。ここまではまだ入り口故そうでもないが、この先は、人類史の淀みによって構成された空間だ。」

 山本「人類史の淀み…?」

 ベン「そうだ。この先は、人類が経験した、過去、現在、そして未来における地獄の詰め合わせのような場所なのだ。多くの殺戮の歴史によって作られた、この星の知的生命体の力によって誕生した空間だ。あの那由他銀河によって残されたものらしい。」

 

老人は深刻な口調になる。それもそうだろう。この先に待ち構えているのはあらゆる次元における、全ての人類が経験する負のエネルギーをもって作られた世界だからだ。それに、ここにおいてついにはっきり名前が出た、那由多銀河の名前だ。

 

 山本「…那由多銀河。先の時空大戦の首魁か。」