片翼の天使 39

今、戦っている二人を除いては、完全に花火大会のお客様状態となっていた。それほど、この二人の戦いは、苛烈で美しく、嵐のようで煌びやかだったのだ。

 山本は、1秒以内に、炎、氷、風の魔術を同時に放てば、相手は水、雷、炎の魔術を繰り出した。それぞれが激しくぶつかり合うと、魔術で作り出した副反応ゆえか、まるで宙に花火が打ちあがったかのような光がする。このようなことを、二人は30秒ほどやったが、これでも決着はつかなかった。

 山本「どうやら魔術勝負では一切勝負がつかないと見ていいようだなセフィロス。」

 セフィロス「…どうやら、そうらしい。クラウド以外で、ここまでついてこられる者は初めてだ。…さて、時間が惜しいな。」

それは突然である。セフィロスはそういい終わると、背中に黒い天使のような羽を生やす。…つまり、本気になった証拠である。

 セフィロス「悪いが、これでもやらねばならないことがある。…今は、地に伏せているがいい。」

 

片翼の天使は一瞬で天高く空へと舞い上がる。山本も、彼を追わんとするため、魔術で舞い上がろうとした瞬間、それは起こる。セフィロスは、空中から愛刀正宗の切っ先を地面に向けて投げる。地に刺さったそれは、まるで絶叫の音を奏でたと思いきや、赤い光が当たり一面を覆った。セフィロスの技【心無い天使】が発動した瞬間だった。