5章 冬木にて 2

 ランサー「ところでよ、お前さんに聞きたいことがあるけどいいか?」

 山本「…え、ああ、いいですけど?それは、やっぱり自分があわや水死体になりかけていたことですか?」

 ランサー「ああ、そん通り。一体何があった?誰か暴漢にでも襲われたか?」

…そうだ。自分は謎の敵襲を受けて、気付いたらこんな場所にいた。そんな感じだった。とりあえず、今まで起こったことを正直に彼に話すことにした。

さて、ここで疑問におもう方もいらっしゃるだろう。普通なら、こんな話を信じてくれないどころか、まず変人扱いされるだろう。しかし、彼はさも親身になって山本の相談を聞いてくれているのだ。それには、このランサーと呼ばれる彼にちょっとした秘密があるのだ。良く良く考えれば、名前が【槍兵】なんてのはおかしな話である。彼の正体については、また後程語ることとしよう。ただ、いまは都合上話を進めることとする。

 ランサー「いやっ!それ結構やばい話なんじゃあねぇか!…しかし、聞いたこともない連中だな。一体そいつらは何のために固まって動いてんのか皆目見当もつかねぇ。それに、お前さんらがあれだけ抵抗してもかてねぇって言うからにゃ相当な手練れだなそいつら。」

 山本「そうなんだ。しかも、どうやら、自分以外の仲間が何処にいるのか分からない状態なんだ。」

 良牙「うん。そうだ!私も一緒にあかねさんを探しに行かなくては!」

 ランサー「…」

 山本「…」

山本とランサーは、いつの間にかその場所にいた響良牙に気づいた。しかも、全く話がつながってなさ過ぎてどこからどう突っ込んでいいのか分からない心情になった。しばらく続く無言の時。会話のタイミングがつかめないまま暫し時がながれる。

 ランサー「…おい、そこのバンダナの兄ちゃん。」

最初に口を開いたのはランサーだった。

 良牙「…おれか。」

 ランサー「そうお前。…いつの間にいたんだそんなとこに?」

 良牙「さっきからだが?それがどうし」

 ランサー「どうしたじゃねぇぇぇよおおおぉぉぉぉおお!お前さっきまでいなかっただろうがよ!ってか、あかねって誰だ。」

 良牙「えっ、そりゃ俺のこいびt。」

 ランサー「しらねぇよ!!突然会話に加わったようで今までの話ガン無視しやがって!」

正にランサー!彼のするどい突込みが、良牙に鋭く尖った槍のように突き刺さる。