モールとその師 3

そう言い残して、二人は目の前から完全に消え去った。あたりを見渡しても、もう誰もいない。一体今のは夢か幻か。と、一瞬思った一行だったが、どうやら、現実であったらしい。というのも、この階のトイレから自分たちがいる所までシッカリと戦闘の跡が残っているからである。

 エルザ「どうやら、逃げられてしまったというわけか。」

 アレン「ええ。しかし、何とか皆さん無事で助かったと考えたほうがよかったと考えたほうがいいかもしれません。これだけ派手にやられてしまっていることを考えると、奇跡かもしれません。」

彼らがあたりを見渡している間に、駆けつけた多くの国連軍の人たちや日本の自衛隊、警察、救護ロボットなどが彼らを無事発見し、救出した。彼らも、テロリストを追い払った【と思っている】住人を祝福し、彼らを讃えた。

この事件を目撃していたある人物は、その惨状を見て何とも言えない驚きの表情を見せていた。

 ?「やれやれ、まさかこんなことになっているとは驚きだねぇ。先に、この国で仕事を終わらせてから彼らの救出をやろうと思っていたら。全く、二足の草鞋を履くのも大変だ。」

その歪な建物を見上げていると、羽織っている上着の腰あたりに着いてあるポケットから振動が始まった。どうやら、何者かが彼に電話をしたらしい。

 ?「はい、こちらアメリカ合衆国時空省次官【アーデン】…なに、そっちは大変だろうって。ああ、かなりひどいよ。全く、出張先がこんなことになっているなんて正直驚きを隠せないよ。…ええ、私も何かできることがあれば手伝いますよ、大統領閣下。」

アーデンと名乗るその男は、そのまま電話をかけてきた相手と話を続ける。どうやら、彼が無事かどうか改めて確認しているところらしい。

 アーデン「何、こちらはいたって平気ですよ。ホントに本当。こっちの時空省に入る直前だったっていうこともありますが。…そうしましょう。では。」

電話を切った彼は、そのまま日本時空省を数秒見つめた後、後五時間と何やら呟きながらどこかへと去っていった。